権利を登録しないまま中国市場に参入するのは、封印のないコンテナを出荷するようなものです。最初の取引が成立する前に、中身が他人の手に渡ってしまうおそれがあります。中国では、権利の確保は参入の第一歩であり、最後に済ませる手続きではありません。
世界の特許出願のおよそ半数は中国に集中しており、その数は年間約160万件にのぼります。この数字の裏側には、他社の技術やデザインが模倣されるスピードの速さがあります。だからこそ、自社の技術・製品・コンテンツを法的に保護することは、中国進出の最初に行うべき手続きです。
権利化が遅れると何を失うのか
中国は先願主義を採用しています。権利を得るのは、アイデアを思いついた人でも、最初に使い始めた人でもなく、最初に出願した人です。つまり、製品が生まれた日よりも出願日のほうが重要であり、出願が遅れるほど不利になります。日本の特許庁で取得した権利は、中国では一切効力を持ちません。

よくあるのは次のようなケースです。展示会で新製品を発表した企業が、数か月後、まったく無関係の第三者に自社の商標を先に登録されていたことに気づきます。残された選択肢は、自社ブランドを買い戻すか、ブランドそのものを変更するかの二つしかありません。
⚠️ ご注意:出願は、製品の一般公開や展示会への出展よりも前に行ってください。公開後の出願では手遅れになりかねません。
法的枠組み:中国の国内法と国際条約
中国は国際的な知的財産制度にしっかりと組み込まれています。ベルヌ条約、パリ条約、TRIPS協定を批准し、特許協力条約(PCT)の締約国であり、WTO加盟国でもあります。そのため、外国の出願人も中国企業と同じ保護を受けることができます。

著作物は中国の著作権法、発明や製品デザインは専利法によって保護されます。いずれの法律も中国の国際的な義務に沿って改正されており、これが外国の権利者が中国企業と同等の保護を主張できる根拠となっています。
中国の専利:保護対象と出願ルート
専利に関する手続きは、すべて中国国家知識産権局(CNIPA)が担当しています。中国に営業所を持たない外国企業は直接手続きを行うことができず、国が認可した専利代理機構に依頼する必要があります。

日本と異なり、中国ではデザインも専利法で保護されます。専利は次の3種類です。
| 種類 | 保護対象 | 存続期間 | 要件 |
|---|---|---|---|
| 特許(発明専利) | 技術的解決手段、方法、装置 | 20年 | 新規性、進歩性、実用性 |
| 実用新案 | 製品の形状・構造 | 10年 | 新規性、実用性 |
| 意匠(外観設計) | 製品の外観デザイン | 15年 | 独創性、主要な特徴の新規性 |
意匠の存続期間15年は、比較的新しい制度です。2021年の専利法改正前は10年でした。医薬品分野には特別なルールがあり、発明の保護期間を最長5年延長することができます。
国家知識産権局での出願の流れ
手続きはすべて中国語で行われます。出願は次の段階を経て進みます。
- 代理機構が書類を作成し、オンラインまたは窓口で出願します。
- 方式審査で、書類がそろっているか、形式が整っているかを確認します。
- 実体審査を行います。対象は特許(発明専利)のみです。
- 国家知識産権局が査定を下し、登録された専利を公告します。
期限に関しては、次の制度を活用できます。
- パリ条約優先権:最初の外国出願から、特許・実用新案は12か月、意匠は6か月です。日本での出願日を中国で主張することができます。
- PCTルート:中国国内段階への移行期限は優先日から30か月で、追加料金を支払えば32か月まで延長できます。
- 新規性喪失の例外:中国政府が主催または承認した展示会や学術会議で公開した場合、その後6か月以内に出願すれば新規性は失われません。
一方、実体審査の請求を先延ばしにすることはできません。出願から3年以内に請求しなければ、出願は取り下げたものとみなされます。
出願費用と維持費用
予算は、国家知識産権局の官庁手数料、代理機構の費用、翻訳費の三つで構成されます。官庁手数料の目安は次のとおりです。
- 特許(発明専利)の出願料:約900人民元
- 実体審査の請求料:約2,500人民元
- 実用新案・意匠の出願料:約500人民元
登録後は毎年年金を納める必要があり、その額は年を追うごとに高くなります。これは意図された仕組みです。年金が上がっていくことで、権利者は専利を実際に活用するか、放棄するかの判断を迫られ、使われない専利が登録簿にたまるのを防いでいます。年金を納めなければ、権利は失われます。
専利を取得できないもの
中国の専利法では、次のものは保護の対象外です。
- 科学上の発見
- 疾病の診断方法および治療方法
- 動物および植物の品種
- 知的活動の規則および方法
- 原子核変換によって得られた物質
- 法律や社会道徳に反するもの
理由は明快です。一部は特定の権利者に独占させるべきではない基礎的な知見であり、残りは公共の利益に直接関わるものだからです。
中国での模倣が心配ですか?
- 特許化できる範囲を判定
- 他社権利の侵害を確認
- 最適な保護戦略を設計

中国の著作権:発生と立証
中国では、著作権は作品が創作された時点で自動的に発生し、登録は義務ではありません。保護の対象は次のとおりです。

- 文学・学術・芸術の作品
- 図形作品、建築の設計、写真
- 録音物およびソフトウェア
保護期間は、著作者が個人の場合は生存期間とその死後50年、法人の場合は創作から50年です。
著作者人格権は、どのような場合でも著作者に残ります。氏名表示権、作品の改変を禁じる権利、公表するかどうかを決める権利がこれにあたります。財産権を譲渡した後も、これらの権利は著作者が保持します。
「登録は義務ではありませんが、証拠の確保を怠ってよい理由にはなりません。著作者であることに異議を唱えられたとき、所管機関に寄託した作品の写しがあれば、紛争での立場は大きく強まります。」――セルゲイ・コノン(Sergey Konon)
著作者であることを立証する方法はいくつかあります。
- 作品の場合は、中国国家版権局への登録
- ソフトウェアの場合は、中国版権保護センターへの登録
- ©表示の付記
- 公証
- 米国議会図書館著作権局への任意登録
ブランド保護の要となる商標
社名、ロゴ、図形などは、国家知識産権局に商標を出願・登録することで保護されます。手続きにはおよそ9か月かかります。登録された商標の存続期間は10年で、何度でも更新できます。

中国国内市場で迅速かつ確実な保護を得たい場合は、マドリッド協定議定書による国際登録よりも、中国への直接出願のほうが一般的に有利です。また、特許・商標・著作権は個別に考えるのではなく、組み合わせで考えることをお勧めします。一つの製品が複数の権利で同時に守られることも少なくありません。
香港・マカオは別制度
香港とマカオは、それぞれ独自の知的財産制度を持っています。中国本土での登録はこれらの地域には及ばないため、現地で別途出願する必要があります。香港の商標は、香港知識産権署が所管しています。

📌 ポイント:中国本土、香港、マカオの保護はそれぞれ別のものです。地域ごとに個別の出願が必要です。
侵害に対する罰則と権利行使の手段
権利侵害に対しては、次の三つの責任が問われます。

- 行政責任:罰金、模倣品の没収、侵害者の営業停止
- 民事責任:損害賠償または法定賠償
- 刑事責任:悪質な場合は最長10年の懲役
権利者がとれる手段も多岐にわたります。
- 訴訟前の警告書の送付
- 知的財産専門の裁判所への提訴
- 損害賠償または法定賠償の請求
- 模倣品の市場からの排除
予防策も有効です。中国の税関に権利を登録しておけば、輸入・輸出の両方向で模倣品を国境で差し止めることができます。
中国で特許を守りたいですか?
- CNIPA経由で特許出願
- 著作権の保護
- 模倣品・侵害への対応

まず何から始めるべきか
権利の確保は、中国市場への扉を開くものであって、閉じるものではありません。最低限必要な手順は次のとおりです。

- 代理機構による登録簿の事前調査
- 特許、実用新案、意匠の出願
- 中国国内での商標出願
- 必要に応じて、作品やソースコードの登録
- 香港・マカオでの別途の権利化
期限内に、不備のない内容で出願することで、拒絶のリスクを下げると同時に、模倣を大幅に難しくすることができます。
専門家署名:セルゲイ・コノン、知的財産専門の弁護士
よくある質問
必要ありません。著作権は作品の創作と同時に自動的に発生します。ただし、中国国家版権局や中国版権保護センターに登録しておくと、著作者をめぐる紛争が起きた際に立場が強まります。
中国に営業所がない場合はできません。国が認可した中国の専利代理機構を通じ、中国語で出願する必要があります。
出願日から20年で、延長はできません。唯一の例外は医薬品で、最長5年の延長が認められる場合があります。
有効ではありません。香港は独立した法域のため、香港知識産権署に改めて出願する必要があります。
罰金、模倣品の没収、損害賠償などが科されます。悪質な場合は最長10年の懲役となります。
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