口約束とメッセージアプリで送った請求書は、最初のトラブルが起きるまでは実にうまく機能する。だが不良品が届いたり納期が崩れたりした途端、争う足場が一切なくなる。ここでは、実際にあなたを守る契約書の組み立て方をまとめる。
そもそもなぜ契約書が必要か
書面の合意は形式ではない。それがなければ銀行は送金を処理せず、税関は貨物を通さず、揉めたときに拠り所が何もない。契約書そのものが工場を規律づける効果も持つ。数字がそれを裏づける。中国国際貿易促進委員会(CCPIT)の資料によれば、2024年の紛争のうち相当数を外国の買い手が敗けた理由は、契約書がそもそも無かったか、供給者が用意した雛形を読まずに署名したかのどちらかだった。他人の書式は、常にそれを差し出した側に有利に書かれている。

堅い契約書に欠かせないもの
耐える契約書は、いくつかの支柱の上に立つ。

正確な製品仕様
原則は単純で、細かく書くほど自分を守れる。型番、品番(SKU)、材質・組成、寸法、重量、そしてPantoneまたはRALで指定した色――望む製品を「似て非なる物」と分ける情報をすべて書き込む。典型的な失敗は、綿100%のブラウスを注文したのにポリエステル混紡が届くケースだ。署名済みの仕様書は、それを「言った・言わない」から交換・返金の根拠へと変える。部品表(BOM)も同じく重要で、工場が勝手に安価な部品へ差し替えるのを防ぐ。仕様書は附属書として添付し、契約書の不可分の一部と位置づける。
引渡条件
貨物の責任が誰に・どこで移るかは、選んだインコタームズで決まる。必ず2020年版と具体的な地点を明記する。

| 貿易条件 | 買主にリスクが移転する地点 |
|---|---|
| EXW(工場渡し) | 売主の施設で――ほぼすべての負担が自分に |
| FCA(運送人渡し) | 運送人への引渡し後 |
| FOB(本船渡し) | 船積み後 |
| CIP(輸送費保険料込み) | 輸送費と保険料は売主負担 |
| DDP(関税込持込渡し) | 売主が戸口まで届ける |
通貨・価格・支払い
決済通貨は固定しつつ、支払期限をきつく縛りすぎないこと。国際送金は今も時に遅延し、硬直的な条項は自分の落ち度なく違反しやすい。方法としては信用状(L/C)またはエスクローが最も安全で、簡便策の定番は前金30%・出荷後70%。100%前払いはリスク最大の姿勢だ。そして支払いは必ず供給者の法人口座(対公口座)へ――個人カードや第三者への送金は詐欺のサインであり、あとの経理照合・通関・外貨手続でも面倒の種になる。

品質と不良品の返品
品質面での検収の仕方、保証期間(通常は半年〜2年)、クレームの出し方、返送費用の負担者を独立した一節で定める。異議申立ての期限も設けること――外観検査は到着後数日以内、据付けを要する設備は試運転・全体検収の合格後という具合に。機械設備なら据付・試運転と要員教育も加える。これらの行がなければ不適合に対する補償はほぼ請求できないが、あれば買い手は実際に返金を得られる。
違約金と不可抗力
中国側は、脅し文句の一段落より具体的な数字をはるかに重んじる。遅延1日あたりの違約金とその計算方法を書き込む――これが実際に効くテコだ。不可抗力は詳細に記し、何が免責するのかを列挙する。そうしないと供給者はあらゆる遅れをそこに押し込もうとする。逆に、罰則を盛りすぎないこと。不均衡な内容は、工場に受注そのものを断らせかねない。

言語・印章・署名者
文書は二言語で作成し、齟齬がある場合どちらの版が優先するかを明記する――英語版と中国語版の食い違いそのものが紛争になる例は多い。中国側の署名には、丸い朱色の会社印(公章・社印、いわゆる「chop」)が伴わなければならない。これが無ければ紙はほとんど価値を持たない。あわせて供給者の登記上の中国語正式名称と、署名者の権限を確認する。「別の法人」への支払いは、最も都合の悪いときに表面化する。

いざというときの紛争解決地
準拠法と仲裁機関を事前に定める。中国の裁判所は外国判決をめったに承認せず、中国で下された仲裁判断はニューヨーク条約の保護外となる――だからこそ設計の良い条項が効く。一般的な選択は中国のCIETAC(中国国際経済貿易仲裁委員会)か、香港(HKIAC)での仲裁で、香港の判断は中国本土・香港間の取決めにより本土で執行される。機関は正確かつ明示的に指名すること。中国仲裁法は仲裁委員会の特定を有効要件とし、名称を誤記すると条項が無効となりうる。なお日本と中国はいずれもウィーン売買条約(CISG)の締約国であり、明示の排除がなければ国際物品売買に適用される点も押さえておきたい。
供給契約を作成中ですか?
- 契約リスクを精査
- 貴社の利益を条項に反映
- 中国法と仲裁条項に対応

ブランド保護:NNN契約
自社ブランドで生産させる場合、単なるNDAでは足りない――中国ではNNN契約がより有効だ。工場に対し、情報の開示禁止(Non-Disclosure)だけでなく、製品の模倣禁止(Non-Use)、そしてあなたを飛ばして顧客へ直接販売することの禁止(Non-Circumvention)を課す。これが設計と技術を模倣から、また未計上の余剰品の横流しから守る。金型・治具・サンプルの帰属もあわせて定めておく。

中国取引の安全を確保したい?
- 契約書の作成を一貫代行
- 供給停止リスクに備える
- 条項の法務レビュー

輸入者が繰り返す失敗
⚠️ 原則: 署名前に工場を確認し、支払いは法人口座のみ。この二歩で金銭リスクの大半を封じられる。
- 供給者の雛形を法務レビューなしで署名する;
- 個人カードや第三者へ送金する;
- 仕様書なしに、ざっくりした言葉で製品を記す;
- 仲裁条項を忘れ――回収する場が無くなる;
- 取引前に相手方の与信・素性を調べない。
「工場との契約は官僚仕事ではなく、リスクの地図だ。輸入者が金を失うのは、巧妙な仕掛けで欺かれる場所ではなく、自分で穴を残した場所――曖昧な一文、他人の雛形、カードへの支払い――である。締めた条項は、数か月の紛争手続を節約してくれる。」
— セルゲイ・コノン(Sergey Konon)、対中貿易コンサルタント
機能する中国サプライヤー契約書は、詳細な仕様書、正しく選んだインコタームズ、安全な支払い構造、保証、数値化した違約金、そして仲裁条項の上に立つ。署名前に相手方を確認し、文言の精度をケチらず、支払いは公式口座のみ――そうすれば文書は紙束ではなく盾になる。
よくある質問
不可欠なのは、目的物と製品仕様、価格と通貨、支払条件とスケジュール、納期と引渡基準(インコタームズ)、品質要件、違反時の責任、そして紛争解決の仕組みだ。曖昧な文言は将来の紛争の種になる。
実務的には二言語(日本語または英語と中国語)の文書とし、齟齬時にどちらが優先するかを事前に取り決める。中国の裁判所は中国語名称と中国語本文で判断するため、契約を現地で執行可能にするのは中国語版である。
相手方の与信・素性調査、100%前払いではなく分割払い、出荷前の独立した品質検査、そして契約本文への違約金の明記。義務を細かく書くほど、権利を主張しやすくなる。
当事者が準拠法と紛争解決地を選ぶ。多くは仲裁(中国のCIETAC、または香港のHKIAC)を好む。仲裁判断は外国判決より中国で執行しやすいためだ。機関は正確に指名すること。誤記や不特定だと条項が無効になりうる。
自社ブランドやオーダーメイド生産ならそのとおり。NDAは開示のみを対象とするが、NNNはNon-Use(製品の模倣禁止)とNon-Circumvention(背後で顧客へ売る行為の禁止)を加える。工場側の知的財産流出の大半は、まさにこの二点で起きる。
Hongkong
China